はじめに
前回の高橋杉雄『日本で軍事を語るということ』に続き、今回は小泉悠『現代戦争論』を読みました。きっかけは、ニュースや対談番組で小泉氏の解説を見て、もう少し掘り下げて知りたいと感じたからです。私はまず人となりや語り口に惹かれた専門家の本を読み、入口にすることが多く、今回もその流れです。
今後は昭和期(戦前・戦中)へと遡る読書も進める予定ですが、その前提として現代戦争の実像を押さえておきたいと考えました。本記事では、本書で学んだことと、読後に自分で進めた関連調査を整理しておきます。後から見返せるよう、要点にしぼってまとめます。
本書の学び
① 現代戦争は短期決戦よりも消耗戦になりやすい
ロシアによるウクライナ侵攻を手がかりに、現代戦の実相が語られます。短期で政治目標を達成するはずだった戦争が、都市戦や砲兵戦を中心とした持久的な消耗戦へ転化していく。ここで改めて強調されるのは、ドローンや精密誘導弾といった新技術の重要性を認めつつも、戦局を左右するのは結局のところ火力(砲兵)、兵站、人的動員の持続力だという点です。つまり、技術だけでは戦争は終わらない。国家の総合力(産業力、人員補充、補給体制)が長期戦でのリスクと機会を左右します。
さらに、核抑止が戦争の外枠を規定している点も重要です。核兵器を保有する国家同士の直接衝突は全面戦争のエスカレーションを招き得るため、周辺国や同盟国は参戦の仕方を慎重に制限せざるを得ない。現代戦は、核の存在を前提にどの範囲まで関与できるかを常に計算する戦争でもあると理解しました。
② ロシアの戦争構造——兵力調達と政治目的
印象に残ったのは、ロシアの兵力構造と戦争の政治的目的の結びつきです。地方の厳しい経済環境が契約兵の募集に影響し、相対的に高い給与水準が入隊の動機になるという指摘が紹介されます。兵力確保が進む一方で、質や士気、損耗率の課題が消耗戦の深化に拍車をかける構図です。
加えて、ロシア側が掲げるウクライナの中立化、非軍事化、非核化、脱ナチ化といった要求は、単なる領土の争奪ではなくウクライナの政治的方向性そのものに踏み込む性質を持つと整理されます。ここから逆算すると、どこで停戦線を引けるのかが見通しづらく、戦争の長期化要因にもなり得ると感じました。
戦死者推計には幅がありますが、私の本書を通した理解の範囲では、ウクライナ側七万〜十二万人、ロシア側十四万〜二十万人以上という数字が言及されることがあります。ただし推計であることと幅が大きいことは忘れないようにします。
調査内容の整理(読後の自習)
本書の読後に、理解を補うために調べた事項を要点メモとして残します。調査は生成AIを使いました。
調査① 核兵器の基礎(原子爆弾と水素爆弾)
核兵器は大きく二種類。核分裂反応を利用する原子爆弾と、核融合反応を利用する水素爆弾です。広島・長崎で用いられたのは原子爆弾。現代の多くの核弾頭は核融合段階を含む設計で高い爆発規模を実現しています。比較の際には、爆発出力(キロトン/メガトン)だけでなく、運搬手段(大陸間弾道ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイル、巡航ミサイルなど)や命中精度(円偏差半径)、指揮・統制・通信・情報の堅牢性といった運用面の要素も不可欠だと整理しました。
注記
大陸間弾道ミサイル(Intercontinental Ballistic Missile)
潜水艦発射弾道ミサイル(Submarine-Launched Ballistic Missile)
円偏差半径(Circular Error Probable)
指揮・統制・通信・情報(Nuclear Command, Control and Communications のような核戦力の指揮統制概念を含む広義の指揮統制体系)
調査② 原子力潜水艦と核抑止(第二撃能力)
原子力潜水艦は原子炉を動力とするため長期潜航が可能で、隠密性の高いパトロールにより生存性の高い核戦力を形成します。特に弾道ミサイルを搭載する原子力潜水艦(Ballistic Missile Submarine)は、たとえ本土が攻撃を受けても報復可能な第二撃能力(Second-Strike Capability)を担保し、相手の先制攻撃を思いとどまらせる抑止の中核となります。
英国海軍は恒常的な連続哨戒で弾道ミサイル潜水艦の存在を維持しているとされ、政府との連絡が断絶した場合に備え首相が最終指示を封書で残す「最後の手紙(Letters of Last Resort)」の慣行も伝統的に語られます。運用実態や即応態勢は機密が多い領域ですが、抑止の要諦は相手に確実な反撃を信じ込ませることにあると理解しました。
用語補足
核弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(Ship Submersible Ballistic Nuclear)
原子力攻撃型潜水艦(Ship Submersible Nuclear)
調査③ オーストラリアの艦艇導入(日本のフリゲートとAUKUS)
ニュースで「オーストラリアが日本の船を購入」と見かけ、整理したメモです。結論としては、日本のもがみ型フリゲート(Multi-Role Frigate)をベースにした艦の導入検討が報じられており、これは水上戦闘艦の話です。一方、潜水艦については、米英豪の安全保障枠組みであるオーカス(AUKUS, Australia–United Kingdom–United States)の枠組みで英米方式の原子力潜水艦を導入する計画が進行中です。
まとめ
今回の読書と調査から理解できた点は次の通りです。
・現代戦争は短期決戦ではなく長期の消耗戦になりやすい
・ロシアの戦争は政治的な目的と軍事行動が結びついた構造を持つ
・核兵器や原子力潜水艦の存在が国際安全保障の枠組みに影響しています
本を読むだけでは理解しきれなかった部分も、議論や追加調査を通して整理することができました。現代戦争を理解するためには、軍事技術だけでなく政治や国際関係の視点も重要だと感じました
付記
本記事は個人の学習メモであり、また個人の意見を反映したものでもありません。あくまで中立目線で書いているつもりです。一部に推定値やが含まれます。最新の数値や政策動向は更新されるため、一次情報の確認を継続します。
